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ごうごうごうごう、ごう、 「火災報知器、誤作動、出火地及ビ原因不明、何者カニヨル侵入ノ可能性、可能性68パーセント、繰リ返ス、火災報知器、誤作動、」 シュ、と言ったきり機械は動かなかった。 凡そ、一般人がどれほど働いたとしても目にかかることの出来ない大金を、更に二乗したって足りないくらい高額な機械は軍部のとある執務室につけられた。問題は、勿論執務室自体ではない。その執務室の所謂、主と呼ばれる存在である人物は「ホノオ」と名乗った。故に、機械はそれを「ホノオ」と認識した。 ――第一幕 だから、何? 「軍部は国民の血税をなんだと思っているのだろうね。こんなくだらないことに使ったりして」 ほんとうに、と呟く声が部屋中に反響した。実に不愉快である。 「きっと、軍部も貴方には言われたくないでしょうね」 「おや、君はそっちよりなのかね。随分と軍部の肩を持つじゃないか」 それっきり、副官は沈黙。ああ、本当に面白くない、どいつもこいつも、この世の中全て俺以外の人物は不愉快である。先日、お偉いさんのうちの一人(嫌味な奴だが、名前を知らない)に「ああ、これはこれは、遠い田舎へようこ……と、いけないな、また間違えてしまった。私は中央へ移ってきたのだったか、これは失礼」と嫌味の一発をかましてやれば「問答無用!」と野太い声で叫ばれた。セントラル、というものは怖いところである。いくつもの束になった金を差し出され、 「エサをやるから少しは静かにしていろ」 イコール、俺より目立つ行動は慎みたまえ、ということだろうか。ああ、ひじょーに残念だ、お友達になりたかったのに。 「貴方は私よりいけないな、そんなもの、受け取れませんよ」 「文具代とでも、食事代とでも書き換えればいい。私の権力を嘗めないでくれたまえ。マスタング大佐、こういうときに受け取らないのはあまりにも無礼だ」 「ああ、失態を犯してしまった。なにぶん田舎育ちなもので、」 しかし、ね。 「受け取れませんよ、やはり。貴方の背後に、沢山の人が見える」 イコール、マス・コミュニケーションの人たちに、俺が賄賂を頂戴しちゃったことを書いて世論に広めるんだよね!本当に俺は嫌われているなあ、と再確認。悲しくないわけが無い。故に、「国民の血税をなんだと(以下略)」という発言に至ったのだ。 少ない仲間の一人である副官も、何故かあっちの肩をもつ、ああ、実に不愉快で俺は次第に不機嫌になった。先ほど食べた、オイル・サーディンの匂いが部屋中に充満していた。缶詰の味はそこそこで、もともと安いオイルを使用しているのかべっとべとのギトギトだったそれが、俺の胃にヒットしたのだろうか。なんと、ついていない! 「鰯がお好きなのは良いですが、あまり、早いうちから敵をつくらないように」 そうだね、ほどほどにしておこうか。 ――第二幕 ストップ、猿芝居! 「てめえと偉い野郎の会話って、こっちも聞いてて疲れるんだよね。きっとてめえも疲れているんだろうとは思ったけど、」 「飛んだな、恐らくプラス20センチメートル」 「聞けよ!」 卓上に上り、思い切り蹴ってやった。奴は書類を紙飛行機にして飛ばし、その後に定規をもってその場へ慎重に歩み寄り、飛行機が落ちている付近にぐりぐりと赤のマジックで印をつけ、一ミリたりとも誤差の無いように測定しているのだ。疲労がピークに達して、ついにこんな風に……、と涙ぐんでやろうかと思えば、奴には不釣合いな副官から「いつものことだから、放っておいてね」と言われたのだ。いつも、だと?本当にご愁傷様です、みなさん。 奴らの会話は比喩の多用。回りくどいのを嫌う俺にとっては「単刀直入に言えよ!」と突っ込みたくなるほどに、言葉を隠して、隠して、隠しまくっている。 「しかしね、鋼の。そちらのほうが嫌味っぽく聞こえるんだよ」 へえ、そうなんだ、いらんところで頭を使わなくてもいいのに滑稽だねえ。 ぽつり、ぽつりと窓に雨が叩きつけられて、ぽたり、ぽたりとしずくが垂れて、室内はむさ苦しいにも程があって、煤の臭いだとか、血腥く、ましてや何か、鼻につんとくる匂いも。 「プラス23センチメートル!鋼の、それはね昼食べた缶詰の臭いだよ」 ああ、なんて可哀相な、 ――第三幕 偽善者滅亡、生き残るのはね ああ、赤、い。あかいあかいあかいあかい。視界を赤が占領、聴覚の不必要。 ごう、ごうごう、ごうごうごう、ごうごうごうごうごう、 「おめでとう、鋼の!」 カランカラン、とベルでもあれば良かったね。鋼の、作ってくれ給えよ、一等賞だよ、ああ!と叫ぶ男の軍服の蒼が目に沁みて、耐え切れずに一つだけ瞬きをした。 「鰯の、鰯の缶詰を捨てる際には、きちんと分別しなさい。気をつけるものは、ゴキブリだ」 「部屋、鰯、ノ臭イト、『ホノオ』ノ不始末 原因!」ほんとうに、ごうごう、ごうごう、 「ああ、そんなことより、ロイ・マスタングは居なくなったよ、思う存分喜びなさい」 ほんとうに!怒鳴り声が聞こえて、俺は何時に無く上機嫌だった。ビニールの焼ける臭いがして、きっとまもなく意識不明。もう、終幕?冗談じゃない! いつまで経っても、 「お願い、わたしを修理に出して、お願い、お願い、お願い、わたしを」 ああ、悲しいどうせわたしは機械なの、なんて随分と自虐が好きだったけれどそんなのちっとも鬱陶しくないわけでシュ、と言ったきり、ぷっつん。たかが機械の猿芝居、それでも君はプリマドンナ!俺はガラクタを目の前に、鬱陶しいばかりの拍手喝采、もうすぐ幕開け!それでも勿論、独りきりなのでした。 |