「僕はね、空をとびたいんだ!」
青空の下、弟が両手を目一杯広げて何かを呟いていた。それでも、田舎の空は酷く綺麗で俺も真っ青な中をただ、なんとなく浮かぶのはどんなに気持ちよいことだろうと見上げると、ふいに弟と目が合った。
「フライ、じゃなくてジャンプ、だよ」
「お前、空を跳びたいのか」
無邪気にも、うん、と頷く弟の姿を見て俺は真っ白な洗濯物と真っ青な空へと目を向けた。空をジャンプしたらな、宇宙に行くんだよ。真っ黒で誰もいなくて寂しい宇宙に。星なんてものは幻想で、本当は宇宙のごみとか隕石とかが浮かんでいるだけなんだ。一人っきりの虚しい空間に打ち上げられるだけだ。
「違うよ、兄ちゃん」
何が、と問おうとして俺は黙った。ふわり、と優しい石鹸の匂いがして視界が真っ暗になった。そのずっと遠くのほうで弟が何か言っている。それは否定的で鋭利な刃物のように非常に暗く、あまりにも濃い闇を思い起させた。随分と大人びたことを言う弟が悔しくて俺の上に被さったシーツを無理矢理剥ぎ取って視線のずっと先を走っている弟の背中を追いかけた。今日の晩御飯は、エビフライ。