「ソラリス」

目の前で笑っている女は、ついこの間自分と会ったばかりの女に錯覚した。自分の手元には拳銃。そしてその先は女の命を狙っている。(気づかなかった)女の身体にはウロボロス。ウロボロスっていえばえっと、確かその、あのチビが言ってた、あれだ、あれ。なんて一見速く頭が回転しているように見えて全く動いていない、寧ろノロノロと動く脳。しかしそれが微塵でも動くのでさえ自分自身嫌がっているのが分かる。(いっそのこと、フリーズしてしまえとも思った)頭と身体がバラバラに弾き飛ばされたような感覚に陥った中で、隣の上司と言えばいつも以上に冷めた目で女を見て銃を平気で撃つし、女は血まみれの身体で起き上がってあちらこちらに銃痕があるのも気にも留めないようで先ほどと同じように背筋が凍るような笑みをこちらに向けているし、嗚呼どうなっているんだと思ったなかで、ふと頭に浮かんできた「人造人間」の言葉に俺は愕然とした。ああ、自分はというよりも、自分の脳は本当に馬鹿なんじゃないかと思い、自己嫌悪をする。(何を今更)しかも俺の身体は、口は自分以上に阿呆でその言葉をいつの間にか呟いていたらしく、嗚呼!どうしてこう、俺は現状を更に悪化するようなことをしてしまうんだと心の中で頭をかきむしった。とにかく、えらいことになったことはこの俺だって分かる。隣の上司の緊迫、それでいて何もかもに冷めたような殺人鬼の顔、目の前で人間を超越した力を持ち今の状況に対して楽しそうな女。俺達が彼女の(知りたくも無い)全てを知った今、彼女はどうするつもりなのだろうか。「じゃあ、さようなら」と今までの女のように別れてくれるはずも無い。俺が彼女を振れば良いのだろうか。(振るのは初めてだなぁ)というか、今までの全てが彼女の演技だったわけでつまりは彼女への好意(花束をあげたりだとか)は俺の勘違いなわけで、実際目の前に居る「ソラリス(偽名)」は人を殺すのも躊躇しない図太い神経を持った女なわけだから振るも振らないもそんなのは関係ないわけだ。俺は全てを知っているから、恐喝か取引をするか?待てよ、そういや、ドラマで犯人を恐喝する野郎は100%に近い割合で殺されるわけで、え、でもその理由は証拠隠滅で、じゃあ俺達の命が危ないってことか?いや、普通に考えればそうだよな。隣の上司はこういうことには慣れてそうだなぁ、とかそんなくだらないことまで考え出して、しかし俺の頭では冷静に考えれば"くだらない"ような事を考えるだけでも精一杯だった。それでも女の言った「会いたかった」と言う言葉だけは俺の中にでん、と居座って

最後まで上司の援護という情けないポジションのなかで、決して一縷の望みを託したわけでもなく、勿論どっかのドラマの中の気障な男を演じたいわけでもなく。

「ソラリス」